伊藤畜産と夏日牛

鳥取・因幡の澄んだ空気と澄んだ水の大自然の中に伊藤畜産はあります。

二箇所ある牛舎のうち、母子が一緒に育てられる牛舎は、背後を神社の杜に守られています。木々を渡る風の中、子牛は8ヶ月になるまで育てられ、それから山の上の牛舎へ移動します。

山の上の牛舎は海を臨み、彩雲がかかり、夜には満点の星空が広がります。町から距離を置いた山の上で、牛たちはのんびりと育ちます。

環境や人為的なストレスがないからか、伊藤畜産の牛たちは、とても人懐こいのです。牛舎の戸口をくぐる前から、彼らの強い視線を感じます。もちろん敵意ではありません。

知らない人を警戒しないどころか、あげられるものなら諸手を上げて歓迎してくれそうな温厚な性格の子ばかりなのは、毎日、愛情をたっぷりと注がれているからでしょう。皆、顔つきがとても穏やかで、目の奥も静かです。人間を心から信頼している証でしょう。

伊藤畜産の牛舎で共に生きているのは、牛だけではありません。牛舎の中にはハエや、蜘蛛、カマキリといった様々な生き物が、同じ空間に住んでいます。薬物消毒を行わず、自然の食物連鎖がそのまま保たれているからです。結果としてハエの発生量も一定に抑えられ、殺虫剤の利用も避けられる善循環が生まれます。

この「共生」思考(志向)は、外部環境のみならず、牛の内部環境にも適用されます。伊藤畜産では、牛の胃や腸内に生息する数多くの細菌や微生物と上手に付き合い、その活動を支援する「菌活」を心がけています。

例えば飼料。穀物を最初に与えてしまうと、牛の胃の中が酸性に傾いてしまいます。それを避ける為、まず乾草や藁をやり、胃を守れるようにしてから、独自配合した雑穀入りの穀物飼料を与えます。最後にもう一度乾草や藁をやり、お腹の中の微生物の力を借りて食後の胸焼けを防ぎます。

こうして食のストレスを極力軽減させながら、2年半の歳月をかけて一頭一頭、丁寧に身体を作っていきます。

このようにしてお届けするのが、象牙色の脂身を備えた赤身の綺麗なお肉です。

生の状態でも、色も見た目も、脂身がふんわりとしています。そのふんわり感は、火を入れてもキープされ、口に入れるとあっという間にさらりと溶けてなくなります。それに対し、赤身の部分は深い味。きめ細やかなのに、お肉の味はしっかりしているのです。

噛めば噛むほど、の「かめば」くらいで、お口から消えてしまうくらい柔らかいのに、滋味深い。肉汁溢れるお肉を食べた!という満足感があるのに、胃もたれしない。

「ふわふわな牛肉」とは不思議な言葉の組み合わせですが、それ以外には思いつかないほど、しっかりしつつも軽やかさも備えた肉質なのです。

お肉は、ハレのお食事です。ステーキに焼肉、すき焼き、ローストビーフ等、大人になってからも、美味しいお肉を食べる日は、特別なイベントのように感じます。他にも気合を入れたい時、大事な勝負の前日、またはその後の食卓を、お肉は賑やかに彩ります。

美味しく楽しい団欒になりますように。わたしと誰かが、食を通じて繋がりますように。

いつか頂く命を大切に育む。

伊藤畜産の「夏日牛」は、今日も、大小様々な命と共に、生きています。